マネージャーになりたてのころ、クライアントの社長に呼ばれた。よくやってくれているとまずはねぎらいの言葉。しばらく雑談をして本題に。ひとつ頼みがある、と社長は切り出した。自分の社長としての評判を部長クラスに聞いてもらえないか、ということだった。個人名はいらないから、と付け加えた。社長の部屋に呼ばれるのはパートナー(*注:コンサルティング会社の共同経営者、取締役クラス)の仕事と決まっている。それがマネージャーになりたての私を呼んでくれたのだ。社長に信頼されて個人的に頼みごとをされたことを意気に感じてしまった。自ら改革の旗振りをしている社長の孤独さが伝わって痛ましくもあった。
あろうことか私は忠実に実行した。聞いてみると思いのほか社長は理解されていない。とにかく批判が多いのだ。ご丁寧にレポートまで作って食事の席でそのまま伝えた。社長は一読してレポートを片手で握りつぶし、ぞんざいに放り投げた。ひとこと「だれもわかっちゃいない」とだけ言った。その後本件には一切触れられなかった。
なぜあのとき黙って引き受けたかなぁ……。なぜ、シャチョーっ、回りの評判なんか気にしないで、って元気付けてあげられなかったのだろうか。部屋に呼ばれて胸襟をひらいてくれたそのときが、まさにチャンスだったのに……。若すぎて生意気言えなかったなら、せめてウソの報告書を出すべきだったのではないだろうか。カラオケ連れてって、部屋に閉じ込めて「それが大事」を三回連続絶唱してあげたほうが良かったかもしれない。大企業の社長だって家では単なる足のくさいオヤジだったりするわけで、責任をひとりで背負い込む立場は寂しいことも多いと思う。そういう一人の人間に、何の力にもなってあげられなかった。猿のお使いのような目的意識のない「そのまんま作業」で、もっと孤独にしただけだった。
コンサルタントの仕事はなかなか奥深い。たとえば企業のトップに対するインパクトでいうと、三つの発展段階があるように思う。第一段階は、論理・分析攻め。正しい(と思われる)解を自分で求めることができ、それをファクトと分析で論理的に説得しようとする段階だ。たとえば、他の投資を全部凍結してでもすぐ中国に進出すべきという提案に、社長が「いやだなぁ」と言ったら、次の日、更に150ページの分析でぐうの音も出ないほど徹底的にたたみかける。更に難色を示されたら、更に分析をする。論理はほぼ完璧になる。社長のタイプにもよるが、この場合八割がた中国へは進出しない。
次の段階はやや面白い。社長が中国進出に反対と知ると原因を探ろうとする。単に個人的に大陸が嫌いらしい、と知ると、単純に好きになってもらおうとする。一緒に連れて行こうか、など、楽しいことを考え始める。分析もレポート書きも全て放り投げて視察旅行の最高の演出を考えたりするわけだ。成功の確率はぐっとあがる。
最後はかなりの完成形だ。社長に、「こいつが言うならやってみるか」と思わせるオーラと信頼関係だと思う。コンサルタントが人間力で仕事をする段階だ。
あろうことか私は忠実に実行した。聞いてみると思いのほか社長は理解されていない。とにかく批判が多いのだ。ご丁寧にレポートまで作って食事の席でそのまま伝えた。社長は一読してレポートを片手で握りつぶし、ぞんざいに放り投げた。ひとこと「だれもわかっちゃいない」とだけ言った。その後本件には一切触れられなかった。
なぜあのとき黙って引き受けたかなぁ……。なぜ、シャチョーっ、回りの評判なんか気にしないで、って元気付けてあげられなかったのだろうか。部屋に呼ばれて胸襟をひらいてくれたそのときが、まさにチャンスだったのに……。若すぎて生意気言えなかったなら、せめてウソの報告書を出すべきだったのではないだろうか。カラオケ連れてって、部屋に閉じ込めて「それが大事」を三回連続絶唱してあげたほうが良かったかもしれない。大企業の社長だって家では単なる足のくさいオヤジだったりするわけで、責任をひとりで背負い込む立場は寂しいことも多いと思う。そういう一人の人間に、何の力にもなってあげられなかった。猿のお使いのような目的意識のない「そのまんま作業」で、もっと孤独にしただけだった。
コンサルタントの仕事はなかなか奥深い。たとえば企業のトップに対するインパクトでいうと、三つの発展段階があるように思う。第一段階は、論理・分析攻め。正しい(と思われる)解を自分で求めることができ、それをファクトと分析で論理的に説得しようとする段階だ。たとえば、他の投資を全部凍結してでもすぐ中国に進出すべきという提案に、社長が「いやだなぁ」と言ったら、次の日、更に150ページの分析でぐうの音も出ないほど徹底的にたたみかける。更に難色を示されたら、更に分析をする。論理はほぼ完璧になる。社長のタイプにもよるが、この場合八割がた中国へは進出しない。
次の段階はやや面白い。社長が中国進出に反対と知ると原因を探ろうとする。単に個人的に大陸が嫌いらしい、と知ると、単純に好きになってもらおうとする。一緒に連れて行こうか、など、楽しいことを考え始める。分析もレポート書きも全て放り投げて視察旅行の最高の演出を考えたりするわけだ。成功の確率はぐっとあがる。
最後はかなりの完成形だ。社長に、「こいつが言うならやってみるか」と思わせるオーラと信頼関係だと思う。コンサルタントが人間力で仕事をする段階だ。
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南場さんのコンサル論。自分、まだまだっす。